ある実家リノベーションで、天井近くに明かり取りのガラスを取り付けました。
当初は計画になかったものですが、ご要望の意図を理解して実現したこの小窓。
はじまりは現場が進行する中で生まれたご要望でした。
こんなリノベーション計画です
横澤さま(仮名)は4人家族、現在お住まいの分譲マンションから、空き家だったご実家に転居される計画です。
今回のご紹介する、リビング横の和室を子ども部屋に改装する工事は全体リノベーションの一部として進行中です。
リビング側は収納棚とパソコンコーナーになります。

Goodnotesで描いた現場メモです。図の点線部分が、今回の「室内窓」を設けた位置。
工事の状況はこんな段階です
必要な壁のみ残して解体が完了し、壁をふさぐために新しい壁の骨組みができたところ。
[和室側から見た壁面の骨組み写真]

現場を見て生まれた横澤さんのご要望
「ここに窓、つけられないでしょうか?」
お話を伺うと、リビング側の収納を取り払った状態の明るさを見て、
この明るさを取り入れたいと思われたそうです。
このお部屋には、ベランダに面した掃き出し窓があります。
たしかに周辺環境と方位の理由からそれほど明るくはないのです。
工程的には、ちょっと遅いけど何とか出来そうなギリギリのタイミング。
さて、どうしましょう?
私が心配した2つのこと
明るさを取り入れたいというお気持ちはよくわかります。
その上で、明かりとり窓を付けることで心配になる気持ちを伝えました。
ひとつは、寝室とリビングという違った性格の部屋なので、生活リズムが違うこと。
もうひとつは、メリットを感じられる機会はそれほど多くないのでは?
ということでした。
ひとつ目の心配は、リビングと寝室間の窓であることです。
この部屋の主は、中学生の娘さんです。
先々、受験勉強をしたり夜更かししたり、疲れて早く寝る時もあるでしょう。
リビングの明かりがガラス面を照らすと照明器具のように光ります。
寝室に自分の意思でコントロールできない照明器具があったら困るだろうなと思いました。
ふたつ目の心配は、思った効果を感じる機会が少ないことです。
娘さんは、部活を一生懸命やっておられて、土日も平日も日中は外で過ごされています。
朝日を呼び込む効果はあるので良い面もあるのですが、ひとつ目のようなデメリットと釣り合うかどうかです。
せっかく、費用をかけて明かりとり窓をつけたのに、
子どもの不満のタネになってしまった。ということはどうしても避けたい。
その気持ちを伝えました。
話し合う中でわかった本当の理由
横澤さんは、この部屋のことを違った目線で考えておられました。
娘さんが無事巣立ったあと、自分の部屋にしたいと思っていらっしゃったのです。
この部屋はすぐ横にキッチンがあることや、いくつかの理由を考えてのこと。
老後の過ごし方まで将来設計までしっかり考えておられてました。
正直驚きました。そこまでお考えとは。
私が想定していた未来は、
お子さんが外で世帯を持ち、家族で帰省した時にはこの部屋に泊まるだろうという感じでした。
その場面には、別の方法で対応できるので問題ありません。
キッチンのそばというのは、この部屋しかないので
横澤さんの言う理由なら賛成です!
具体化しましょう!
必ず娘さんにデメリットも伝えて、納得を得てくださいね──そうお願いしました。
後日、横澤さんから「全然気にならないって言ってました」と笑ってお話しいただき、私も安心しました。
中学生の女の子らしく、むしろ“自分だけの部屋”ということのほうが嬉しかったようです。
万が一まぶしさを感じるようなら、ロールスクリーンなどで調整できるということで、無理のない落としどころも見つかりました。
ご希望の位置の室内窓には心理的にも良い効果があります。
角部屋のような錯覚をさせてくれるんです。実際には窓の向こうはリビングなのに
外気に面しているような広がりを感じます。
ところで、そうと決まれば大急ぎで検討しなくてはなりません。
まず、私が使える時間を確認します。
現場の大工さんに窓をつける位置を示し、その部分をどのくらい現状で止めておけるか相談します。
さらに想定される3パターンの仕様を打ち合わせ、あまり時間はありません。
横澤さんとは、換気も必要か?や、材質など、具体的な要望を整理します。
ぴったりのガラスが見つかった!
あの場所に収まりがいい窓探しです。
既製品の窓や外部用サッシ、オーダーで木製窓を増作することも検討。
いいのが見つかりました。
倉庫の奥にあった、外部サッシ用のガラスが2枚。

型板ガラス(ペアガラス)なので、覗かれる心配もありません。
さらに、光をやわらかく拡散してくれる特性があり、室内がふんわりと明るく感じられます。
断熱性もしっかり確保できて、リビングとの仕切りにぴったりの素材でした。
現場で確認し、このガラスに決定しました。

リビング側からもアクセントに
ガラスは木の縁で固定することにしました。細めにあまり主張しすぎないように。
2枚のガラスを並べると中央に継ぎ目ができます。当初はガラス突きつけでという話でしたが、
その部分にも同じサイズの縁を取り付けてもらいました。
すごく喜んでくださったので、良い判断だったなと自画自賛です。たまにのことなので、お許しください。

思ったこと
住まいづくりって、つくる人と住む人が、
お互いを尊重し理解し合う姿勢が大切だなと思います。
できるだけ丁寧にヒアリングしますが、
長年暮らしてきた家族のクセや性格を知る、住み手の方にはかないません。
一方、理想の実現には、つくる人たちが積み上げてきた経験と知識が必要です。
今回は、その理解し合う気持ちが良い結果に結びつきました。
真の意図を素直に話してくださった横澤さん。
私の相談に乗り、材料探しや現場の調整に尽力してくれた監督。
内容が決まるまで待ってくれた大工さんたち。
お客様を含む、いいチームと仕事ができて本当に幸せです。
最後までお読みくださった、
あなたにも感謝です。







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