ひと目でわかる“断熱リフォーム優先順位”

「せっかくリフォームするなら、光熱費をグッと下げたい」。そんな声に応える断熱リフォームですが、どの部位から手を付けるのが最もコスパが高いかは住まい手にとって大きなテーマです。ここでは一般的な木造住宅(1980年代以前〜低断熱仕様)を想定し、窓 → 床下 → 屋根 → 壁の順でおすすめする理由と費用目安をまとめました。

目次

ひと目でわかる優先順位&コスパ表

優先部位熱の出入り割合※1ざっくり費用相場体感・光熱費改善総合コスパ
1窓(開口部)冬 58%/夏 73%内窓後付け 4–7 万円/窓
サッシ総交換 10–20 万円/窓
冷暖房効率 & 結露減・騒音減
2床下冬 10%床下吹付 10–30 万円
床張替え 70–110 万円
1階足元の底冷え解消
3屋根/天井夏 11%/冬 5%天井上吹込み 30–80 万円
屋根材断熱併用 80–150 万円
2階・小屋裏の暑さ/寒さ改善
4冬 15%/夏 7%内張り 80–250 万円(延38坪)効果大だが工事負担大△(大型改修時)

※1 一般社団法人 日本建材・住宅設備産業協会「省エネ建材で、快適な家、健康な家」よりデータ引用。

1. なぜ窓がトップなのか

図1 住宅の部位別・熱の出入り割合(データ出典:一般社団法人 日本建材・住宅設備産業協会 技術資料を基に筆者作成)
  • 熱損失・ gain が最大:冬は約6割、夏は約7割が窓経由。
  • 工事が最短半日:既存枠そのままの内窓なら養生〜完了まで1窓30分程度。
  • 補助の追い風:「先進的窓リノベ2025」で Low-E 内窓は戸建て最大200万円相当補助。
  • 補助なしでも10年前後で回収:LIXIL試算で▲約1,700kWh/年、電気31円/kWh換算で約5万円/年削減。

2. 床下と屋根 ― 同率2位の使い分け

床下を先に勧めるケース

  • 生活の中心が1階(高齢の親世帯など)
  • 床下に潜れる or 床仕上げ更新と同時施工できる
  • 冬場の底冷え・結露・カビ臭が深刻

屋根を先に勧めるケース

2階の寝室が夏サウナ化しやすい
小屋裏に吹込みスペースがある
外装改修(葺き替え・塗装)のタイミング

3. 壁断熱は“大規模改修とセット”が吉

壁は面積が大きく、材料費 + 仕上げ復旧が高くつきがち。気密ラインの取り直しや結露計算も不可欠なため、スケルトン改修や無断熱倉庫 → 住宅化など「どうせ壊す」場面で一気に行うのが現実的です。

4. 数字で見る費用対効果(kWh/万円)

部位想定世帯
(延120㎡)
年間削減
エネルギー量
改修費kWh/万円
窓(内窓10カ所)東京6地域▲1,800 kWh60 万円30
床下吹付 ▲600 kWh25 万円24
屋根断熱 ▲700 kWh90 万円8
壁内張り ▲1,200 kWh200 万円6

※東京電力エリア/電気31円/kWhで試算。窓改修の優位性が際立ちます。

5. よくある質問(FAQ)

Q. 窓だけでどの程度の光熱費削減が期待できますか?

4人家族・延床120㎡のケースで年間約5万円(冷暖房 + 断熱効果による機器稼働時間短縮)と言われています。地域やサッシ仕様で変動するため、内窓シミュレーターなどの試算がおすすめです。

Q. 補助金が終わったら損ですか?

補助金は「早く動くほど得」ですが、窓の結露・騒音軽減など快適性メリットはコスト回収とは別軸。補助が終了しても実施価値は十分あります。


まとめ

窓 → 床下 → 屋根 → 壁の順で手を付けると、費用を最小限にしながら体感温度を最大化できます。特に窓は最短半日施工 × 効果最大。まずは1室でも内窓を試してみれば、断熱リフォームの価値を実感できるはずです。

参考資料

  • 一般社団法人 日本建材・住宅設備産業協会『省エネ建材で、快適な家、健康な家』(技術資料)
  • 国土交通省『先進的窓リノベ事業』公式サイト
  • LIXIL『内窓インプラス 光熱費削減シミュレーション』
  • 埼玉県『エコリフォームのすすめ』
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