家族は引き戸、猫は壁ぬけ。

丸尾さま(仮名)ご家族と一緒に考えた、「猫ちゃんのための壁ぬけ動線」についてお話しします。
既製品ではなく、暮らしに馴染む方法を探してたどり着いた、ちょっと楽しい工夫です。

※プライバシー保護のため、仮名でご紹介しています。

目次

きっかけは、壁の大移動。

丸尾さまは、ネコ3匹と暮らすご家族。築30年の木造2階建て、1階フロアを丸ごと更新する
部分リノベ住みながらリノベ、の計画です。

間取りと使い勝手を見直す中で、リビングと隣接する和室を仕切る壁の位置をずらすことになりました。
このいきさつも面白いので、別の機会にお話ししますね。

この間仕切り壁には引き戸がついています。
新しい壁にはさらに大きく開くようになった新しい引き戸がつきます。

元の引き戸には、ネコちゃん用の既製品の猫ドアがついていまして、
ロックが多機能です。

元の引き戸には、ネコちゃん用の既製品の猫ドアがついていまして、
ロックが多機能です。開放したり、閉鎖したり、片側からだけ開くようにしたりできる優れものです。

既存の建具についていた猫ドア。多機能で便利ですが、厚みが気になる場面もありました。

壁の大移動に伴って建具が変わるので、当然のことながら
新しい建具にも猫ドアを取り付けたいというご要望が出てきたのです。

開放したり、閉鎖したり、片側からだけ開くようにしたりできる優れものです。

壁の大移動に伴って建具が変わるので、当然のことながら
新しい建具にも猫ドアを取り付けたいというご要望が出てきたのです。

ただ、設計者の私からすると、ちょっと気がかりな点がありました。

相談したこと、考えたこと。

気になったのは、引き戸を開ける時に猫ドアの厚みがジャマをして、建具が十分に開かないという状況です。
さらに建具を開けるたびに猫ドアが建具に当たって、カツンと音がするのも気になります。

丸尾さまにとっては、日々の生活に溶け込んでしまっていて気にならないご様子です。

設計者の私としては、リビング横のお部屋は、将来寝室になるだろうと予測していますので、
新しい建具には、同じ問題を引き継がせたくない、というのが本音です。

そして、こうなった。

この問題は、意外にあっさり解決できました。
ご提案した解決策のデザインを、大喜びして気に入ってくださって。

それは、こんな単純なアイデア。

建具に穴を開けるのではなく、新しくつくる壁に穴を開けるのです。
ネコちゃんだけが通り抜けられる、専用トンネル。

絵本のネズミの棲家の入り口のような、扉のないシンプルな穴。

猫ドアのロック機能は失われますが、、、と言いかけると、
「その時は物を置くから大丈夫!」とすかさず丸尾さま。

設計者としては、できる限り穴のまわりに余白をとりたかったので、
位置を考慮し、コンセントを遠ざけ、巾木を無くし、
余計なものを排除して、さりげなく引き立つよう配慮しました。

その後の反応など。

「横の扉が開いてるのに、わざわざ穴を通るんですよ!ネコちゃんが!」と、明るく笑う丸尾さま。

ネコちゃんにも、丸尾さまにも気に入ってもらえたようです。
何度通っても穴が傷まないように、職人さんたちに苦労してもらった甲斐がありました。

来客の方にも好評だそうで、目立たないシンプルな穴だけど、必ず目にはとまるようで、
その反応を見るのが嬉しいっておっしゃってました。

きっと、丸尾さまの視線が誘導してるんじゃないかと私は思ってますけど。

これからの方への補足。

これから計画される方に向けて、寸法や配慮したことなど補足しますね。

開口寸法

穴の大きさは、もともと使われていた猫ドアの開口寸法と猫の体格から決めました。
既製品の実開口寸法より少し広い、幅20センチ、アーチの頂上で27.5センチとしています。

穴の形状について

既製品の猫ドアは建具に取り付けるのでまたぐ形になるのですが、
通り穴は床をフラットにした歩きやすいトンネル状にしました。
上部をアーチ状にした理由は、浅野さまが好きな形だと想像したからです。

床材が部屋をまたいで繋がるので、フローリングが違和感なく続くように施工の順番など工夫してもらいました。

下地づくりがポイント

上部をアーチ状にする時に直線の立ち上がりからアーチに自然につながるよう、
大工さんと下地づくりについて丁寧に打ち合わせをしています。

この計画の成功は、下地づくりにかかっていると言っても過言ではありません!

穴の内側は下地を合板でしっかり造ってあります。猫が引っ掻いたり体を擦り付けたりしても大丈夫なように。
今回は壁紙の仕上げでしたが、漆喰塗りのような左官仕上げも感じ良く仕上がると思います。

断熱が気になるなら

ただの穴なので、冷気が抜けていくことを心配する方もいらっしゃるかもしれません。
基本的にリビングと続くこの部屋を含めて、猫ちゃんの活動スペースとお考えなので
今回は検討事項にもあがりませんでしたが、断熱が気になるとおっしゃったら
透明なフィルム状の「のれん」を提案するつもりでした。空気の流れを止めるだけでも違いますよね。

行動範囲の制御について

文中でも触れましたが、穴の行き来を制御するのに
猫ちゃんのおもちゃがいっぱいのバスケットをご利用です。穴を塞ぐように奥だけ。
既製品の猫ドアのスイッチ操作より直感的で早いと好評だったりします。

あなたの計画のご参考になれば幸いです。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。

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